一般社団法人
日本海洋文化総合研究所

NEWS

のぼるぞ!波切神社!──取材体験記その5

※本記事は、ジャーナル掲載記事の背景を紹介する取材記録です。

まず「波切神社とは何?」と思われる方が多いだろうから、簡単に説明しておくと、三重県の志摩市大王町波切にある神社のことである。

本記事では、齢19の私が波切神社へと参詣する一場面を紹介する。

漁業と真珠のまち、波切

2025年10月初旬。三重県志摩市に訪れた私は、到着後すぐ、湿った暑さにやられていた。

10月の北海道といえば木々の色づきが始まる頃だろうに、三重はまだまだ暑い。

北海道の夏に慣れ切っていた私には心底辛い環境だ。暑さに弱い自分が情けない。

しかし、そんな弱音は吐いていられない。

なんといっても、今からこれを上るのだから。

波切神社へ続く道

波切神社は崖の上にある。

そのため、神社へ行くには階段をひたすら上らなければいけない。これは事前調査で分かっていたことだが、実際にこの目で見ると冷や汗がにじむ光景であった。

とはいえ「まだまだ若者。体力勝負が十八番だ。」という、確かなプライドがあったのだ。今思うと恥ずかしいほどに自己分析が出来ていない。

そして、もう一つ懸念事項があった。

私は蝶々にも声を上げるほど、虫が大の苦手なのである。

19年の間、住み続けてきた北海道。割と地元愛が強い私に言わせると、一番の魅力は虫が少ないことである。人間でも耐えられない北海道の冬だ。虫にとっては八寒地獄のようなものだろう。生きられるわけがない。

対して、三重はどうか。

暖かい、湿気のある土地。それはいるに決まっている。分かっていた。

その上、波切神社周辺は木々に囲まれている。いない方がおかしい。分かっていた。

分かっていたが、怖いものは怖い。脚が六本以上ある生き物には本能的に恐怖を覚えてしまう。

だけども、行くしかないのだ。行くと決めたからには。

波切神社への期待、道中への不安、その他さまざまな思いを心中に抱えつつ、最初の段に足をかけた。その後も一歩、また一歩と足を滑らせないよう注意しながら、せっせと上る。

足を踏み外しそうになっても上る。飛んでくる虫に恐怖しても上る。その他の障害にも心を折らずに強い足取りで上る。

そうして上へ上へと何十段も上り続け、やっと開けたところに出ると、念願の波切神社が見えてきた。

波切神社到着!

綺麗な白い鳥居を見てホッと一息、張り詰めていた緊張の糸がほぐれる。

それからキョロキョロと周囲を見てまわっていると、境内には波切神社に伝わる「ダンダラボッチ伝説」について書かれた碑が、社殿内には歴代の「わらじ祭り」の様子を残した写真などがあった。

神社を後にして…

十分に堪能し、さて帰ろうというところで、来た道とは別の道を発見してしまった。

まるで、秘密基地への通路のようだ。幼少期の思い出がよみがえる。

好奇心は止められない。せっかくなのだから行ってみよう。

すっかり気を緩めていた私はもう一度、虫の襲来に叫び声をあげることになる。

もしかすると、どんな虫がいたのか気になっている方がいる可能性もあるので、

そんな方のために、私が一番度肝を抜かれた一匹を書き残しておく。

フナムシである。

沿岸地域に住んでいる方なら「なんだその程度か」と思われるかもしれないが、蝶々で恐怖する私にはあまりにも凶悪な見た目なのだ。

フナムシを知らない方は、お手元にあるスマートフォンで検索するか、脚がたくさん生えているゴキブリを想像してもらえれば良い。

だが、砂浜のゴミを綺麗に食べてくれるフナムシは「海辺の掃除屋」とも呼ばれ、人類に有益な存在だったりする。

見た目で判断してはいけないということだ。

人間よ。怖い怖いと恐れるなかれ。

ちなみに、波切神社に伝わる「ダンダラボッチ伝説」は、大男ダンダラボッチが自分よりも小さな人間に一泡吹かせられる物語である。

昔々の伝説にも、現在に通用する教訓が隠されているのだ。

ダンダラボッチよ。小さい見た目に侮るなかれ。

(道を抜けた先は周囲を展望できる公園に繋がっていた)

コミュニケーター養成プログラム受講生 H.A