一般社団法人
日本海洋文化総合研究所

ABOUT

海洋文化に関する学術的な探究と
成果の普及啓発を目指します

活動内容と展望

  1. 調査・研究活動
  2. 学界コミュニティの設立
  3. セミナー・勉強会・講演会
  4. 知的資源のアーカイブ
  5. 社会課題や地域課題の解決

「なぜ私たちは共同研究という形を選んでいるのか」

私たちの主なテーマは、「海と人の関係」の探究と、新たな視点の提示にあります。このテーマはきわめて複雑で、多面的です。だからこそ、自然科学、人文科学、社会科学といった学術的知見に加え、現場で活動する人々の経験や知恵も含めた、多様な視点を融合させる必要があります。新たな理念や方法論を生み出すためには、分野を超えた知の結集が欠かせません。京都大学人文科学研究所の桑原武夫氏は、共同研究のあり方について、「一つの部門の専門家でありながら、同時に隣接部門にも透徹した理解を持つ科学者たちのチーム」の重要性を説きました。また梅棹忠夫氏は、学際的な研究における分業主義(コンパートメンタリズム)への警鐘を鳴らしています。私たちが目指すのは、まさにこのような深い相互理解に基づいた共同研究のスタイルです。複数の専門家が熱意を持って集い、専門や立場の枠にとらわれることなく、分野や領域の境界を超えて、自由な意志のもとに議論を重ねていく——その中から、一人の研究者だけでは見えなかった風景が立ち現れてくると信じています。これは単なる「分業」ではなく、問いと問いが交差し、新たな視点が生まれるための「開かれた探究の場」です。異なる知が響き合い、混ざり合いながら、一人では辿り着けない場所へと共に向かっていく——それが、私たちの目指す研究のかたちです。
現在、私たちは以下の二つのプロジェクトを展開しています。

海と灯台学
プロジェクト

灯台をめぐる新たな問いを、探究と対話から描き出す

灯台は長きにわたり、航路の安全を守る存在として海とともにあり続けてきました。その光は、海を行き交う人々にとって、まさに希望と方向を示す象徴でした。しかし近年、GPSや電子航法技術の発展により、灯台の機能的な役割は相対的に薄れつつあります。その一方で、灯台はいま、新たな視点から再評価され始めています。日本財団と一般社団法人海洋文化創造フォーラムが取り組む「海と灯台プロジェクト」がその牽引役となっています。観光や教育、地域づくりの拠点としての活用、さらには海洋史や文化を語る物語の鍵として——その多様な可能性に光を当てる動きが、全国各地で広がりを見せています。私たちの「海と灯台学プロジェクト」は、こうした現場での実践と呼応しながら、灯台の持つ意味や価値を、文化的・歴史的・社会的な観点からあらためて問い直すことを目的として、「海と灯台プロジェクト」の一環として立ち上がりました。地域の活動団体や専門家と連携し、調査研究を進めることで、現場で模索を続ける人々の力となりたいと考えています。灯台を起点とした「海と人の関係」の再発見と、その未来への継承を目指して——私たちは新たな海の知をひらいていきます。

現在の取り組み
  • 海と灯台学に関する学術的コミュニティづくり
  • 新たな理念や方法論を生み出すための分野を超えた知の結集・共同研究会の開催
  • 活動の成果や可能性を広く共有するための『海と灯台学ジャーナル』の企画・編集
  • 学術成果を灯台に関する活動を行う人々へ分かりやすく伝えること

これらを通じて、灯台をめぐる知と知、知と実践の交流の場を少しずつ広げています。

これから目指すこと

灯台を未来へつなげるために——知の循環と社会との連携

今後、私たちは「海と灯台学」をめぐる学術的コミュニティの深化と拡大に取り組み、分野を越えた知の結集による探究の力を一層高めていきます。同時に、本プロジェクトを通じて得られた知見や成果を、市民、行政、教育関係者、観光や地域づくりに携わる民間事業者など、多様な主体と積極的に共有・対話することで、灯台の価値の再構築と、その実践的な活用=「現場への実装」を後押ししていきます。私たちは、「海と灯台学」が、灯台を未来へとつなぎ、文化資産としての灯台の意義を見直すための重要な鍵となることを願っています。そしてこの探究を通じて、海と人との関係の新たな地平を切り拓いていきます。

海ノ民話学
プロジェクト

海とともに生きる声を、未来につなぐ。

かつて海は、人々にとって恵みであると同時に、畏れや畏敬の対象でもありました。その感情や知恵、暮らしの記憶、世界観や死生観は、海にまつわる民話という「語り」のかたちで、世代を超えて伝えられてきました。しかし現代において、私たちの暮らしと海との距離が広がるにつれ、こうした物語の意味や価値も、次第に薄れつつあります。民話は、海と人との関係性を映し出す貴重な文化資産であり、そこには地域の記憶と誇り、そして人間と自然との関係性の知恵が込められています。本プロジェクトは、日本財団および一般社団法人日本昔ばなし協会が進める「海ノ民話のまちプロジェクト」の一環として、その文化的価値を学術的視点から再発見・再構築することを目的に立ち上がりました。「海とのつながり」や「地域の誇り」を次世代へと語り継ぐという想いに共鳴し、私たちは、各地に息づく海の民話に込められた知や記憶を再び照らし出し、それらを現代の文脈において捉え直す探究に取り組んでいます。海と人をつなぐ「語り」の力を見つめ直し、物語を未来へと手渡すための知と実践を、ここから育んでいきます。

現在の取り組み
  • 海ノ民話学に関する学術的コミュニティづくり
  • 新たな理念や方法論を生み出すための分野を超えた知の結集・共同研究会の開催
  • 活動の成果や可能性を広く共有するための『海ノ民話学ジャーナル』の企画・編集
  • 学術成果を灯台に関する活動を行う人々へ分かりやすく伝えること

これらを通じて、海ノ民話をめぐる知と知、知と実践の交流の場を少しずつ広げています。

これから目指すこと

「海ノ民話学」の創出に向けて——学術と地域の共創

今後、私たちは「海ノ民話学」をめぐる学術的コミュニティの深化と拡大に取り組み、分野を超えた知の結集によって、海ノ民話やそのアニメーションに内在する価値と可能性を探る力をさらに高めていきます。また、「海ノ民話のまちプロジェクト」が、より豊かに地域に根づいていくよう、学術的知見からの支援や伴走型の協働を通じて、現場とのつながりを深めていきます。市民・教育関係者・地域団体など、さまざまな主体と共に取り組みながら、民話の持つ新たな意味や価値を社会に問いかけ、活用の可能性を広げていきます。たとえば、海ノ民話アニメーションを多様な視点から読み解き、地域で活動する方々や教育現場の先生方に向けた活用の手引きを提供したり、地域の語りや知恵に基づいた新たな海ノ民話アニメーションの創作を支援したりといった取り組みを進めたいと思っています。地域とともに考え、ともに語りながら、海ノ民話を未来へと受け継ぐ文化として育んでいく——それが、私たちが目指す「海ノ民話学」のかたちです。